ごあいさつ

本研究会は名称は好塩微生物を謳っていますが、内容は塩と生物に関わる研究会であり、微生物のみならず、高等植物にまで及んでいます。取り上げるテーマは非常に幅広く、色々の人が色んな分野で取り組んでおられ、その研究の深さも予測出来ないユニークなものがあります。最近はバイオテクノロジーなど新しい技術が開発され、それにより研究・探究はますます興味深いものになって参りました。

元々、本研究会は塩ストレスに対応する生命現象の解明と、塩環境適応という環境に対する適応性解明に関する研究でしたが、近年は、塩が微生物に対して生長促進を行うことや殺菌作用を行うという興味ある研究分野にまで及んでいます。環境に対する適応性の問題は、最近のように環境汚染により環境問題がクローズアップされ、社会的問題になって参りますと、環境変動に対応すべき生きものの問題は自然科学の分野にとどまらず、社会科学的分野にまで及ぶものを含有してきました。

環境変動に関しては、すでに平安時代に鴨長明が「方丈記」で世の無常について、「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまるためしなし。世の中にある人と栖と またかくの如し。」 と述べているように世の変化はとどまる所がありません。

地球上における環境問題として、レイチェル・カーソンの「沈黙の春 Silent Spring」(1962年)やシーア・コルボーン等の「奪われし未来 Our Stolen Future」(1996年)で指摘されているように、環境問題は深刻な状態に陥っています。しかも現在、日本人の生活は歴史上かつて経験したことがない「飽食の時代」に入ってきています。しかし、その中にあってもミネラル不足に陥り、脳梗塞や糖尿病、心筋梗塞にかかる人が多く出てきていることも事実です。

この様に環境と生きものの関係は大変な時代に入って参りましたが、塩という特殊な環境ストレス研究は、環境に対して生きものがどう対応し反応するかという問題に一つの解答を与えるという興味ある側面をもっています。

発表の内容がアカデミック的のみならず、その他包括的な視野にたった問題としても取り上げられることが重要です。世界に類をみないこのユニークな本研究会が、皆様のご理解の下に更に進化発展することを切望します。

森下日出旗
好塩微生物研究会 主宰
大阪生物環境科学研究所 所長